熱湯玉露

熱湯玉露は気軽に玉露の風味を楽しめるので、大変便利です。

熱湯玉露は、特撰かぶせ茶などという名前で売られていたりしますが、正式には玉露と区別されるべきものです。

とはいえ、便利で手軽に高級な玉露の風味がそこそこ味わえるのですから、悪いものではありません。

熱湯玉露には、玉露と違って、藁や青海苔に例えられる覆い香や味の深さに致命的な欠如が見られると言われています。

玉露は高級な緑茶の代表格として有名ですが、元は商品名です。

天保6年に、製茶業者の山本山が茶葉を露のように丸く炒ったのが元だとされています。

現在は明治初期に辻利右衛門によって確立された棒状に仕上げる製法が一般的になっていますが、玉露で特徴的なのはやはり茶葉の栽培方法にあるといえるでしょう。

玉露の葉は、新芽が2~3枚開いた頃に日光を遮るヨシズや藁、あるいは最近では化学繊維でできた布を上から被せて育てられます。

専門的には被覆栽培と呼ばれ、玉露の場合20日前後、ずっと日光を遮ってから採摘され、荒茶加工されます。

日光を遮ることで、新芽に含まれる旨み成分のアミノ酸、所謂テアニンが、渋みの主成分であるカテキンへと変化することを防ぐことができます。

結果として、甘く旨みの多い、あの玉露独特の風味ができあがるのです。

玉露の甘みと香りを活かすため、玉露を熱湯で煎じるのは好ましくありません。

湯の温度が高いと、甘みを消してしまう渋みが抽出され、独特の香りも飛んでしまいます。

一度沸騰したお湯を、湯冷ましに入れて60度、銘柄によれば最低40度まで冷めるのを待ってから、急須で煎じます。

煎出時間は150~180秒と安価なお茶より少し長めです。

ほかの緑茶と同様に、最初にアミノ酸などの成分が溶け出て、徐々にカテキンなどの渋みが出るため、2煎目以降は1煎目より高温で良いとされています。

しかし、普段遣いのお茶ではないにせよ、丁寧にこの入れ方をその都度実行するのは、少し手間がかかるというのは事実です。

そこでできたのが、熱湯で入れても美味しい熱湯玉露です。

熱湯玉露は、かぶせ茶と呼ばれるものです。

製造過程はほとんど同じですが、日光を遮る期間が採摘から遡って7日ほどと短めになっています。

この期間の差があるため、かぶせ茶は玉露に比べると少し旨みが減り、その分渋みが増しているといえます。

渋みが増えた分、他の煎茶と同じように1煎目から熱湯で抽出しても損なわれる旨みが少ないということになり、結果として玉露よりも高温のお湯で煎じても良いと言う風になるわけです。

しかし、本来玉露は茶葉も厳選されたものを使い、使う新芽は上の2~3枚のみと限定し、手間暇かけて丁寧に作られる緑茶です。

かぶせ茶では、玉露の風味は完全に再現できませんし、やはりお茶の入れ方が違う時点で、決定的に違うと言うことを理解しておかなければなりません。

熱湯玉露は、あくまで玉露を真似て簡易的に作られた廉価版にしかすぎません。

しかし、それは玉露を名乗っている限りであって、かぶせ茶単体で見れば、他の緑茶に比べて甘みと旨みが引き立てられているのは間違いありませんし、やはり手軽に手間をかけず煎じることができるのは魅力に違いありません。

熱湯玉露は便利なのでおすすめではありますが、ご利用の際は、一度玉露の本当の風味を経験してから、違いをきっちり理解した上で飲むのが良いでしょう。